娘との時間を守るために生まれた「廃棄野菜を救うクレヨン」ーおやさいクレヨン(mizuiro株式会社)
離婚、ぎりぎりの生活、それでも――
離婚してシングルマザーになり、ぎりぎりの生活。
それでも彼女には、どうしても守りたいものがありました。
――娘との時間、そして「安心できる日常」。
その想い一つで会社を辞め、捨てられるはずだった野菜から、まったく新しいクレヨンを生み出したひとりの母親が歩んできた物語。
今回は、「おやさいクレヨン」に込められた想いやブランドストーリー、創業秘話をご紹介します。
「おやさいクレヨン」を手がける、mizuiro株式会社代表の木村尚子さんを取材させていただきました。
「安心できる場所」を探し続けた幼少期

木村さんは、小さな頃から複雑な家庭環境の中で育ちました。
心が落ち着く場所を探し続ける日々のなかで、唯一、安心できたのが――ひとりで絵を描く時間でした。
デザイナーになる夢を抱くも、家庭の破綻で美術大学進学を断念。
その後は仕事と子育ての両立に奮闘しました。
やがて離婚し、シングルマザーとして、必死に働く日々が始まります。
死にものぐるいで働いても、生活は楽にならない…。
それでも木村さんの中には、揺るがない想いがありました。
「娘には、同じ思いをさせたくない」
冬のキッチンで起きた、小さな“ひらめき”
転機は、ある冬の日のキッチンでした。
料理中に目に入った、野菜の鮮やかな色。
「この色で絵を描いたら……美味しそうだな」
そんな、何気ないひらめき。
そこから知ったのが、形や大きさが少し違うという理由だけで、規格外品として廃棄されてしまう野菜や果物の存在でした。
「この色を、捨ててしまうなんてもったいない」
知識ゼロから始まった、クレヨンづくり
文具づくりの知識は、まったくのゼロ。
それでも木村さんは「つくってみよう」と決め、仲間たちと試行錯誤を始めます。

使うのは、廃棄されてしまう野菜や果物。
野菜や果物はパウダー状に加工され、食品着色と同等の基準で安全性に配慮した設計にしました。

クレヨンのベースには、米ぬかから抽出した米油とライスワックスを使用。
万が一、口に入ってしまっても安全な素材だけで出来ています。
素材のほとんどが国産素材で、製造も日本国内。

一般的なクレヨンの3分の1以下の顔料で、老舗工房の職人さんたちが一つひとつ丁寧に仕上げています。
“野菜そのもの”を感じられる色と質感

色の名前は、「にんじん」「ねぎ」「りんご」「トマト」「ほうれんそう」「むらさきいも」など、実際に使われている野菜や果物の名前。
クレヨンには、ところどころ、ざらっとした野菜の質感が残るのも特徴です。
色によっては、野菜や果物を思わせる香りをほのかに感じることも。
娘に届けたかった、「安心できる色」
「娘に、安心できる色を持たせてあげたかった」
娘さんが触って口に入れてしまっても「安心」なクレヨン、
そして、自分自身がずっと探し続けてきたように自分も娘さんも絵を描いて「安心」できる場所。
木村さんが語る言葉からは、おやさいクレヨンを通して叶えたかった2つの「安心」への想いが伝わってきました。
クレヨンが生み出す、もうひとつの価値
そして、このクレヨンには、もうひとつの願いが込められています。
「このクレヨンを通じて、子どもたちが食べものや環境のことに“興味を持つきっかけ”をつくりたい」
お絵かきという、何気ない日常の中で、野菜の色にふれ、名前を知る。
子どもたちが、絵を描くことを通して、食料や環境に目を向けるきっかけをつくる。
おやさいクレヨンは、単なる“絵を描く道具”ではありません。
普通のクレヨンでは得られない、おやさいクレヨンだからこそ叶う体験があります。
捨てられるはずだった野菜から生まれた、小さなクレヨン。
それは、娘への愛と、未来への問いから生まれた色でした。
もったいない廃棄を救う、アップサイクルシリーズ

現在「おやさいクレヨン」は、10色セットをはじめとするシリーズ商品として展開され、
パッケージや巻紙のデザインも時代や用途に合わせてアップデートされてきました。
野菜の他にも、使いやすい色が揃った「おこめのクレヨン」、花のパウダーを使った「おはなのクレヨン」など、素材の可能性を広げる商品開発も続けられています。
さらに、クレヨンだけでなく、果物やお花の香りを活かしたお香も。
廃棄されてしまうはずだった素材が、暮らしの中で、家族の時間を彩る存在へと生まれ変わっています。